カントリー・ブルース(Country Blues)

カントリー・ブルースとは

カントリー・ブルースとは、別名”戦前ブルース”と呼ばれている、ブルースの中でも最も古いブルースです。

※よく『カントリー』や『カントリー&ウエスタン』と混同されますが違うので注意してください。

 

一般的にアメリカ南部を中心に1900年頃から始まり、1940年頃の第二次世界大戦前までのアコースティックギター中心による弾き語りスタイルのブルースが”戦前ブルース”と呼ばれています。

戦前というと古く感じるかもしれませんが、この頃の特徴としてはブルースを基本に、ラグタイムやヒルビリー、ゴスペルなどの要素も入っていて、実はギターのテクニックとしては簡単なものから高難度のものまで幅広くあって、今でも凄いと言えるプレイが盛りだくさんです。

また、当時はアメリカ南部から東海岸にまでブルースの波が押し寄せ、その発祥地やムーブメントが起きた場所の名前を取って、デルタ・ブルースやテキサス・ブルースなどたくさんの『◯◯・ブルース』というものが生まれました。

しかし戦後ももちろん、そういったブルースは続いており、それらをひっくるめて『カントリー・ブルース』と呼んでいます。

主にアフリカ系アメリカ人(黒人)が、大抵は1人でギターをフィンガーで弾きながら歌うといったスタイルが多いです。

「ということは、弾き語りをするということ?」と思われたかもしれませんが、将来的にはそれもアリですね。弾き語りが出来るようになれば1人でライブも十分に出来るようになります。

でもその前に、まずはカントリー・ブルースのギターって弾けるようになるだけでもかなりカッコいいんです。だいたいフィンガーピッキングなので、できたらカッコいいと思いませんか?

あ、それから忘れてはならない奏法があります。

 

一般的にはスライド奏法の方がわかりやすいかもしれませんが、カントリー・ブルースではこの奏法とリゾネーター・ギターを外すわけにはいきません

他のジャンルにはない特徴かもしれませんが、このボトルネック奏法とリゾネーター・ギターの組み合わせがまたカッコ良すぎるんです。いや、渋すぎるとも言えるかも、、、

僕は初めて見た時に一瞬で虜になりました。特にサン・ハウスというブルースマンの映像を観た時は頭をハンマーでガツーンといかれたような衝撃を受けました。

まあ、このボトルネック奏法やリゾネーター・ギターだけでもかなりのボリュームがあるので、また後ほど紹介していきますが、とりあえずその存在だけは覚えておいてくださいね。

 

ちょっとザックリ過ぎますが、カントリー・ブルースはこんな感じです。

もちろん弾けるようになれば楽しいですし、バンドじゃなくてもいいので、極端な話どこでもギター1本あればサラッと弾くこともできます。

ここでは、そんなカントリー・ブルースの魅力を、ギタープレイの面白さ、弾けた時の楽しさなどとともに、たっぷり紹介していきます。

また、後半ではテクニック的な部分についても触れていきたいと思います。

 

カントリー・ブルースって簡単なの?

それで簡単なのか?と問われると、今までのギターの経験次第と言えます。

どういうことかというと、ギター経験って大きく以下の3つに分かれます。

1.フィンガーピッキング経験者

2.フラットピッキング(いわゆるピック弾き)経験者

3.ギター初心者

先にも書きましたが、カントリー・ブルースの特徴としては、ほとんどピッキングが指になります。つまり、例えば今までフィンガーピッキングをやってきた1の人なら、そんなに苦労することもないでしょう。すんなり入れると思います。

でも大抵の人は2、3の人だと思いますので説明します。

 

フラットピッキング(いわゆるピック弾き)経験者の場合

残念ながら、決して簡単ではありません(-_-;)

特にロック系のエレキギターしかやってこなかった場合は、正直難しいです。なぜなら、そのほとんどがフラットピッキングだからです。

じゃあ、ロック出身は絶望的だということ?
サイト主
いえ、そんなことはありません!

僕も元々はロック畑の人間なので、ほとんどピックを使ったギターしかやっていませんでした。だからこのカントリー・ブルースだけじゃなくルーツ系のギターはフィンガーピッキングが多く、中には変態的なプレイも多くて、ずっと無理だと半分決めつけていました。

しかし!

可能性があったんですよ〜!まだ諦めなくてもいい可能性が。

それは、、、左手です。

??

「なんのこっちゃ?」と思われたかもしれません。

ルーツ系に多いフィンガーピッキングは確かに難しいです。でもギター経験者であれば、指板側の左手はロック系でもギターをそれなりに弾けるはずです。(※ここでは右利きの場合なので、左利きの場合なら右手になります)

まあパワーコードとかが多い人もいるかもしれませんが・・・

確かにカントリー・ブルースは難しい。でもそれはほとんどが右手が難しいということです。

今まで右手はピックを持って弾いていたので、指に切り変えろと言われてもそう簡単にはいきません。

ただし!

先程も言いましたが、左手はある程度押さえられるはずです。

つまり、フィンガーピッキングをやってこなかったのなら、難しいのは確かにそうですが、両手ではなく右手のフィンガーピッキングを練習すれば、全く歯が立たないということにはなりません。

だから最初はフィンガーピッキングの簡単な練習から始めて、徐々にレベルを上げていけば良いのです。練習は必要ですが、そのうち慣れてきます。

 

ギター初心者の場合

また、ギター自体が全くの初心者の人だと無理かというと、もちろんそんなこともありませんし、逆に始めからフィンガーピッキングに慣れておけば、ピックより指の方が弾きやすくなります。

どういうことかというと、これは車の運転に例えるとわかりやすいです。

車のギヤ変速を行うのに、今ではほとんどAT(オートマティック)式となっていますが、昔はMT(ミッション)式が普通でした。最近免許を取得した方ならAT限定が多いので、MT式についてはわからないかもしれませんが、操作自体を考えるとATの方が単純なのです。

なぜならATは基本的にアクセルとブレーキだけの操作ですが、MTはクラッチを使っていちいち変速する必要があるからです。

これわかりますかね?もし車の運転をしたことがないのであれば、ちょっとググってみてください。要はMTの方が複雑で難しいのです。

ただ、面白いのがMTしか乗ったことのない人からすると、ATの方が運転しにくいとよく聞きます。

確かに普通に考えるとATの方が圧倒的に簡単なのですが、「慣れ」やエンジンブレーキなどの技術的な部分で、MTしか乗っていない人からすると、ATの方が難しい(やりにくい)という話です。

つまり、これをピッキングに当てはめると、ATがフラットピッキングで、MTがフィンガーピッキングと考えます。すると、最初からフィンガーピッキングに慣れると、フラットピッキングの方がやりにくいという冒頭の話につながります。

だからギター初心者であっても、始めからフィンガーピッキングに慣れるとそれが普通になるのです。

問題は、フィンガーピッキングでくじけそうになった時に、フラットピッキングへの誘惑に負けないことです(笑)。


(出典:Steve Crowhurst

最近は”ソロ・ギター”といって、アコースティックのフィンガーピッキングスタイルで弾く人も増えてきています。これはコロナ禍でなかなかバンド活動が難しいので、エレキギターよりも1人ででも出来るアコースティックギターを始める人が多いことも影響しているようです。

で、ソロ・ギターって伴奏からメロディまで弾くスタイルなので、まさにカントリー・ブルースなどのルーツギターがそうなんですよね。時代にも乗れて?今始めるのならいい機会なのではないかと思いますよ。

 

 

おすすめカントリー・ブルースマン

このサイトはあなたにルーツギターをもっと知ってもらい、少しでも弾けるようになってもらって、残念にもその良さを知らない人たちに広めて欲しいなって勝手に思っています。

ですので、ここではまずはカントリー・ブルースを知ってもらうことが大切だと考えています。

有名なレジェンド級から個人的に好きなブルースマンまで紹介しますが、お気に入りのブルースマンは見つかるでしょうか?

それでは発祥地ごとに紹介していきます。

※ブルースマンの詳細については別サイト【ルーツミュージック同好会 】へのリンクをそれぞれ貼っておきます。

デルタ・ブルース

まずはやっぱりこれです。ブルースの起源や数々の伝説を語る時に必ず出てくる地域、そしてスタイルです。

デルタというのはミシシッピ・デルタのことで、アメリカ南部のど真ん中であるミシシッピ州を流れるミシシッピ川とヤズー川に挟まれたプランテーション地帯のことを言います。

ザックリと場所はこんな所です。

(出典:アラモレンタカー

これがアメリカの地図で赤色がミシシッピ州です。

 

 


(出典:アメリカ生活・e-百科

で、こちらがミシシッピ州の拡大地図で、画面左上のあたりがデルタになります。

18世紀にアフリカ大陸から奴隷労働者として連れてこられたアフリカ系アメリカ人たちは、この地域で綿花を摘みながら、自分たちを労うために”フィールド・ハラー”というブルースの基になる歌を歌っていました。

やがて20世紀になる頃、楽器の進歩も手伝い、ギターを弾きながらブルースを奏でるというスタイルがこのデルタ地帯で生まれました。

まずはデルタ・ブルースの父と呼ばれているチャーリー・パットンから紹介します。

チャーリー・パットン(Charley Patton)

 ”デルタ・ブルースの父”と呼ばれるチャーリー・パットン

Pony Blues

これはチャーリー・パットンの中で最も売れた曲だと言われている代表作です。

1929年に録音されたもので、12小節の典型的なブルース進行の曲ですが、チャーリー・パットンはギターを弾く時に、ピッキングと同時にギターを叩くような奏法をよく使っています。

この曲でもストラミングというテクニックを使っていますし、他にもギターを打楽器の一部のような弾き方をするのが特徴でした。

そんな彼のスタイルが、その後のあらゆるカントリー・ブルースマンたちへ影響を与えたことを考えると、これは絶対に押さえておかなくてはならない重要な曲と言えます。

 

High Water Everywhere

こちらも最も代表的な1曲で、チャーリー・パットンと言えばこの曲でしょう。

1927年のミシシッピ大洪水についての曲です。アメリカの歴史上においても大惨事だったこの洪水によって、ミシシッピデルタ付近に住んでいた多くのアフリカ系アメリカ人が家を失い、家畜や作物も壊滅状態となりました。

そんなやり場のない怒りや感情がこの曲には表れていて、荒々しくギターに手を叩きつけるような音やパットンのやりきれない想いが歌に表れています。

チャーリー・パットンは戦前ブルースマンなのですが、残されているヴィジュアルは上のサムネイルの1枚の写真があるだけです。

もちろん動画などはなく、現在の生存者では誰も実際に見ていないので、あくまで想像の域を出ない部分もあるんですが、ギターでピッキングと同時にボディを叩くパウンディングというテクニックや、低音源を親指で弾くように弾くスナッピングというテクニックなど、数多くの”叩く”系の技を残しています。

この曲でも冒頭からパーカッシブな叩くような音が鳴っていますが、より原始的に近い、そんな気持ちの表現をしたかったのでしょう。ブルースの原点を感じることができる超重要な曲です。

 

サン・ハウス(Son House)

⇒ ”最強のデルタ・ブルースマン” サン・ハウス

Delta Blues

続きまして、こちらも重要なブルースマンでサン・ハウスです。

タイトルがまさに「デルタ・ブルース」!これでもかというぐらいにコッテコテのまさしくこれぞデルタ・ブルースですね。ミシシッピのプランテーションが目に浮かぶようです。

サン・ハウスもデルタ・ブルースの重鎮で先ほどのチャーリ・パットンともかつては行動を共にしていました。

どちらかというと、チャーリー・パットンの曲は特徴があって、あまりカントリー・ブルースに馴染みのない方だと少しわかりにくいかもしれませんが、このサン・ハウスの曲は結構典型的な12小節のブルースなので入りやすいかもです。

ギター1本の弾き語りではなく、セッション形式で演奏しているため他の楽器もあって賑やかですが、曲はコテコテのブルースです。カッコよくてお気に入りの一曲です。

 

Death Letter Blues

サン・ハウスと言えばこの曲というくらいに有名です。再発見後の貴重な映像ですが、ブルース界隈ではとても有名なので、観たことのある人も多いかもしれないです。

僕が初めてサン・ハウスの動く映像を観たのがこれで、本当にブッ飛びました。「カッコいい・・・」ただそれだけでしたね。あまりにも衝撃的だったので、すぐにSNSでもシェアしてしまったのを覚えています。

ロックバンドのホワイト・ストライプスもカヴァーして話題になりましたし、僕の中ではダントツのランキング1位です。本格的にブルースの世界へ引きずり込まれた一曲といっても過言ではないです。だからカントリー・ブルースマンとして彼は絶対に外せません。

 

ロバート・ジョンソン(Robert  Johnson)

⇒ ”伝説のブルースマン” ロバート・ジョンソン

Preachin’ Blues

デルタ・ブルース最後は重鎮ロバート・ジョンソンです。※(通称ロバジョン)

ブルースというジャンルにおいてはあまりにも有名なのでご存知の方も多いかもしれません。デルタ・ブルースのみならずカントリー・ブルースというジャンルにおいて最も重要な人物とも言えるでしょう。

27歳という若さでこの世を去りましたが、生前に残した音源やその生き様などが伝説となっていて、いろんな書籍や映画なども出回っています。

それで何が凄いかと言えば、これもたくさんありますが、このサイトはギターのサイトなのでまずは上の「Preachin’ Blues」の動画を観て欲しいと思います。

メチャクチャカッコよくないですか?

この動画の人物はケブ・モというブルースマンですが、再現VTRとして撮影したようです。もちろんそのケブ・モの動きもカッコいいのですが、曲自体は紛れもなくロバジョンの1937年にレコーディングしたものです。

まさしくフィンガーピッキングなのですが、ボトルネック奏法と後のファンクのようなリズム感の融合、ヴォーカルも含めてこれは本当に凄い曲だと思います。

 

 

Cross Road Blues

ロバート・ジョンソンの代表曲で最重要曲と言われている「Cross Road Blues」です。

”十字路(クロスロード)で悪魔に魂を売り渡して、その代わりにとんでもないテクニックを身につけた”というブルース史上最も有名とも言える伝説を残したロバジョン。

この曲はそんな伝説の名刺代わりともいえるブルースの中でも名曲中の名曲で、後にエリック・クラプトンのクリームを筆頭にたくさんのカヴァーを生み出しました。中にはほとんど原型をとどめていないようなものもありますが、それだけ多くのミュージシャンたちがリスペクトしていたということになります。

このロバジョンの原曲ですが、冒頭からボトルネックのスライド・ギターが入ってきます。聴くとわかりますが、とても変なリズム感でギターが弾かれていて、もう完全に本人のタイム感で進行していきます。

ただ、やっぱりたった1人でこれだけのパワーやエネルギーを放っているところは凄いの一言です。ギターと一体化したヴォーカルがまたカッコよく、これを弾き語りできるようになれば本当に素晴らしいですね。

他にもレジェンド級の曲が多いロバート・ジョンソンについてはぜひとももっと聴き込んで欲しいなと思います。

 

 

テキサス・ブルース

次にテキサス・ブルースです。

テキサスというのはそのまんまですが、アメリカ南部の大きな州であるテキサスです。テキサスと言うと結構ワイルドで荒っぽいイメージがあるかもしれませんが、ギターの方にも少なからずそんな感じがありますね。

エレキブルースの重鎮であるジョニー・ウィンターやスティーヴィー・レイ・ボーンなんかを想像してもらうとわかりやすいかもしれません。ワイルドにブルースやソロを弾くようなイメージです。

それで、ここでは彼らよりもっともっと前のカントリー・ブルースに焦点を当てていきたいのですが、デルタ・ブルースが出始めた頃、ギターで弾き語りをするというスタイルはアメリカ南部を中心にじわじわと広がっていきました。

そんな中でミシシッピ川を超えて西の方へもどんどんブルースの波が押し寄せていきます。そしてやがてその波はテキサスへ行きことになりました。

おもしろいのは、テキサスという所はニューオリンズが近いこともあって、ジャズの土壌もあることです。さらに、南の沿岸ではカリブ音楽の影響や、西部からはカウボーイ、東部からはケイジャンなどのヨーロッパ系の影響などでいろんなジャンルが混ざり合っていた場所でもあります。

つまり、同じカントリー・ブルースでもいろんな影響から少し変わっていて、ベースには無骨な面がありますが、いろんなジャンルが共存している特殊な土地柄とも言えます。

ちなみにあのロバート・ジョンソンもレコーディングはテキサスで行ったということからも、当時のテキサスは都会で、国内中から集まるミュージシャンの音楽活動の拠点の1つだったのだろうと思われます。

 

それでカントリー・ブルースという括りでみるとデルタのように有名なミュージシャンは多くはありませんが、その中でもここでは外せない2人を紹介したいと思います。

 

ブラインド・レモン・ジェファーソン(Blind Lemon Jefferson)

⇒ ”テキサス・ブルースの父” ブラインド・レモン・ジェファーソン

Matchbox Blues

ブラインド・レモン・ジェファーソンと言えば代表曲はこれになるでしょう。いっぱいカヴァーもされています。

デルタ・ブルースと比べるとなんかよくわかりにくいフレーズやリズムが出てきて、不思議な感じですが、これを歌いながら弾いているというのはさすがに少し変態っぽいですね。ただ初めて聞いたときはあまりインパクトはありませんでした。

彼の特徴は単弦引きが多いことです。曲中ずっと何かしら単音でフレーズを弾いていますが、これが後の時代のギターソロの原型とも言われています。もうこの話を聞いた段階で、どれほど重要なミュージシャンであったかわかるかと思います。

本当にこんなフレーズ作れと言われても、まず出てこないところが天才的ですが、よく聴くと歌に合わせてなんとなく適当にアドリブでオカズを入れているようにも聞こえます。

それにしても盲目だったので大したものですね。

 

One Dime Blues

ラグタイムっぽいギターで始まる曲。これもまたなかなかレベルが高いです。本当によくこんなギターフレーズ(リフ?)思いつくなといった感じです。

しつこいですが歌いながら弾いているので、その凄さはギターを弾いたことのあるあなたならわかるのではないでしょうか。

途中の展開のところがおもしろいですが、まさにフィンガーピッキングの基礎が出来ていないとこのプレイは難しいでしょう。

ブラインド・レモン・ジェファーソンの曲の中ではあまり有名ではありませんが、中級以上の演奏レベルを聴いて欲しくて紹介しました。

ここで紹介した2曲のように、ブラインド・レモン・ジェファーソンはあまり一般的なブルースっぽくないのが特徴ですね。

 

 

ライトニン・ホプキンス(Lightnin’ Hopkins)

⇒ ”テキサスの巨匠” ライトニン・ホプキンス

Mojo Hand


ライトニン・ホプキンスの代表曲ですが、ブルース界においてもとても有名な曲です。楽曲、サウンド、タイトル、レコードジャケット、話題性どれを取っても文句なしの1曲と言われています。

『Mojo Hand』というアルバムの冒頭1曲目のタイトル・チューンで、まさにライトニンと言えばコレですね。

カントリー・ブルースと言うよりはブギーっぽいし、何よりフィンガーピッキングはそんなに使っていません。なので他のミュージシャンと比べると肩透かしというか、簡単に聴こえるとは思いますが、カントリー・ブルース〜モダン・ブルースの過渡期にあるサウンドとして捉えてもらえればいいかなと思います。

また、この曲は終始もちろんライトニンのアコースティックギターとヴォーカルの独壇場にはなっているのですが、実はバックのドラムとウッドベースが曲全体に良いテイストを出していることに気づきます。淡々と演っているのですが、特にベースの2ビートが気持ちいいですね。

 

Baby, Please Don’t Go

こちらもライトニン・ホプキンスの代表曲ですが、動画のバージョンは完全にカントリー・ブルースのスタイルになってます。

ブルースでもスタンダードとなっているとても有名な曲で、元はビッグ・ジョー・ウィリアムスが広めたと言われていますが、オリジナルのクレジットはよくわかりません。ブルースからロックまでたくさんカバーされていて、いろんなアレンジやパターンなどがあって聴き比べるととてもおもしろいです。

イントロのギターフレーズですが、Aメロのヴォーカルとユニゾンになっていて同じフレーズを弾いていますがとても有名です。

ライトニンの弾き方はその後多くのミュージシャンに影響を与えていますし、何よりも特筆すべきはそのプレイスタイルがとてもカッコいいということでしょう。

 

 

 

イーストコースト・ブルース

ピードモント・ブルースとも呼ばれ、ジョージア州からアメリカ東海岸を中心に出てきたブルースの形態で、ラグタイムやカントリーなどの影響を受けており、デルタ・ブルースやテキサス・ブルースに比べると明るくて軽やかな感じのサウンドです。

なぜかというと、ミシシッピやテキサスなどの南部と違って、東海岸には白人が多く、黒人と共に文化や音楽的な交流があって、お互いに影響を受けあっていたからです。


(出典:disk union

ブルースのスタイルも基本的にはアコースティックギターの弾き語りですが、白人との交流も多かったので、フィドルやバンジョー、マンドリン、ピアノなども結構入ってきます。

そして特筆すべきは、ギタープレイがテクニカルなことですね。どういうことかと言うと、ピアノで弾いていたフレーズをギターで弾くようになったのもその理由です。つまり、ラグタイムやオールドタイムのピアノをギターで弾くというスタイルにすると、テクニカルになってしまうからです。そのため、全体的に難易度は高めです。

そしてこのフィンガーピッキング・スタイルは、後に”ギャロッピング奏法”というものを生み出す素になります。カントリーギターの生みの親である「マール・トラヴィス」や「チェット・アトキンス」にめちゃめちゃ影響を及ぼしています。

ブラインド・ブレイクなんかはラグタイムのミュージシャンに入れられるくらいですが、大きな括りではイーストコースト・ブルースと呼ぶようになりました。

代表的なミュージシャンとしては、そのブラインド・ブレイクと、ブラインド・ウィリー・マクテルやブラインド・ボーイ・フラーなんかがいますが、ブラインド・ウィリー・マクテルは12弦ギターを使っていたこともあって、ここでは他の2人を紹介したいと思います。

あ、それから偶然と言えばそうですが、彼ら3人は皆盲目でした。戦前のブルースマンに多い「ブラインド・○○○」という名前。当時のアフリカ系アメリカ人は盲目だとミュージシャンになるか乞食になるしかなかったと言われるくらいの過酷な状況だったようです。

確かに目が見えないから耳の力が必要になり、どんどん鍛えられるので音楽の才能が磨かれていったということは言えるのかもしれません。

それぐらい大変な経験をして彼らはミュージシャンとしての地位を掴み取っていきました。

 

 

ブラインド・ブレイク(Blind Blake)

⇒ ”驚異のラグタイム・ブルースギター” ブラインド・ブレイク

West Coast Blues

ブラインド・ブレイクと言えばハイテクニックなラグタイム・ギターというのが代名詞みたいなもので、よくカントリー・ブルースの中でもそのレベルの高さは上位にランキングされます。

このラグタイムギターに影響を受けたギタリストはたくさんいますし、最初期の1926年リリース後、その凄まじいテクニックに当時も皆が度肝を抜かれたそうです。

その難しさの話ばかりになりますが、ラグタイムからジャズっぽい要素までピアノの演奏をギターに置き換えるスタイルは独特で、ブルースだけではなく、ジャズ・ミュージシャンとも交流があったようです。

この曲もかなり洗練されたセンスの良い音になっていて、ギターも軽快なリズム感があって、ベース音と高音フレーズのバランスがとても良くてカッコいいです。

「さらっとラグタイム・ギター弾きたいな〜」なんて思わせられるまさにこれぞブラインド・ブレイクとも言える名曲ですね。

 

Diddie Wa Diddie

これもブラインド・ブレイクの代表的な曲です。いやーしかし相変わらずの上手さですね。こんなギター弾くだけでも凄いのに歌まで歌っているのでやっぱりバケモノです。なんせギターを弾く指の動きは速いし、かといってリズムやタッチが乱れないからたまりません。

とはいえ、実は結構カヴァーをやっている人も多く、この手のフィンガー・ピッキングが得意な人にとっては、そこまで難しくないのかもしれません。ライ・クーダーもカヴァーしているし。

ただ僕みたいなフラット・ピッキングのロック上がりには相当ハードルが高いのは言うまでもありません。が、決してあきらめてはいません。なんとか弾けるようになりたいですね。

あなたももし「こんなギター弾けるようになりたいなぁ」と思われているのであれば、ぜひとも一緒に頑張っていきましょう!

 

 

 

カントリー・ブルースギター(奏法編)〜 その特徴について

ここからは具体的な奏法に関して書いていきたいと思います。

先程まで紹介した数々のブルースマンもそうなのですが、他のジャンルのギターと違ってカントリー・ブルースのギターを弾くのに、下記のようないくつかの特徴があります。

 

アコースティックギターを使う

いろんなチューニングパターンがある

ボトルネック奏法が多い

 

一つずつ見ていきましょう。

アコースティックギターを使う

これは絶対というわけではありませんが、カントリー・ブルースマンの大半は戦前に活躍しており、1940年くらいまではまだエレキギターが出回っていなかったことからも、どちらかというと、アコースティックギターしかなかったというほうが正しいです。

かのフェンダーやギブソンのソリッド・ギターも出始めたのが1950年頃からなので、戦前ブルースマンたちはほとんどアコースティックギターでの弾き語りというスタイルでした。

当時のブルースマンたちは、下記のようなギターを使っていたようですが、もう時代が全く違うので、基本的にはアコースティックギターだったらなんでもOKでしょう。

・ギブソン J-45
・ナショナル リゾネーターギター
・カラマズー KG14

など。

フルアコやセミアコでもいいし、アコギは音が大きすぎるというのであれば、別にソリッドギターでも構いません。

ただやっぱりこの雰囲気はアコースティックならではであります。

 

いろんなチューニングパターンがある

これは後のボトルネック奏法にもつながりますが、戦前のカントリー・ブルースマンは変則なチューニングが多かったのです。

中でもオープンチューニングが代表的で、フレットを何も押さえずに6弦〜1弦の開放弦をジャラ〜ンと弾くとそれでもう和音になっているようなチューニングです。

なぜかというと、開放弦を使って弾くほうが弾きやすいからです。※(指板を押さえる指の数を減らせるため)

それから何と言ってもその響きが最高です。ノーマルチューニングでは出せないようなコードトーンやアルペジオなんかも弾けるので、新鮮な音だし、結構病みつきになっちゃいますよ。

主なオープンチューニングですが、カントリー・ブルースで使われるのは以下のようなものが多いです。

  • オープンG
  • オープンA
  • オープンD
  • オープンE

まあ、実際はこれ以外にもドロップD(6弦のみ1音下げE→D)チューニングなんかもあります。

オープン・チューニングの詳細はこちらの記事へ

 

ボトルネック奏法が多い

先ほどのオープンチューニングでギターを引く時によく使われるのがこのボトルネック奏法です。

ボトルネック奏法とは、別名”スライド・ギター奏法”とも呼びますが、つまり弦の上をガラスやスティールなどの筒を滑らせて、独特の丸みを帯びた音を出すような弾き方のことです。

 

 

カントリー・ブルースギター(奏法編)〜 解説

それではカントリー・ブルースギターを弾いていきたいと思いますが、まずは基本的なところから順に解説します。